うちの母親について。

うちの母親は、戦前の大卒で商社のソウル支店長だった祖父の娘として産まれ、生母は母親を産んですぐに亡くなり、同居している叔母さんに育てられたそうだ。

母の姉は学校に行かされず、家で教育を受けたそうだから、

母親もそうだったのだろう。

周囲からは「家の外に出たらさらわれるで」とか言われていたそうだ。

小学校の低学年のときに敗戦で全て無くして、カバンひとつで帰ってきたそうだ。

学歴のある相手と見合いで結婚したが、嫁ぎ先の祖父は、アルコールを飲んで暴れて、

父親の他の兄弟姉妹からもいじめられたが、父親は守ってもくれなかったそうだ。

最初は団地で父親と住んでいたが、祖父が庭に家を立て、そこに住まわされたとのこと。あまりに苦しいので、子供を連れて出ていこうとしたが、自分の父も亡くなり、

時代的に女性が働くのも難しく、出て行く先がなかったらしい。

夫は理解不能な相手で、義父も理解不能で何をしだすか解らない相手だったので、一番無力なこちらに突発的に暴力を振るっていたのだろう。

理由の分からない暴力に晒されていたのと、世話をされたり、何かを教わることも

無かったため、こちらも周囲の刺激に対して、暴力的に反応していた。

そもそも暴力を振るってはいけないとか、ちゃんとした口の聞き方や、教師には従う

ものだということも教わった事もない。

外から帰ったら手を洗うとか、朝に顔を洗うとかも知らなかった。

下町なら近所の人があれこれおせっかいを焼いて、介入するのだろうが、

地域的にそういうことも無かった。